季節のうつろう秋は、植物に変化があらわれます。紅葉し、枯れてしまうのです。

しかし、同時に次の春に向けて開花する準備を刻々と行なっているのです。

見た目からは想像もつかない、エネルギーを感じます。

その痕跡と証拠が枯葉に刻まれているように見えます。

この枯葉が落ち葉となって、土壌に還り、養分となって自然界に循環します。

ごく身近な我々の足元で、生命にとって大切な手続きが、簡素に坦々と行われているのです。

これは絵画制作にも似ています。

極めて原始的でアナログなデッサンという行為から生まれる学びは、「観察、対話、発見、再認識(認め合い)」という循環の元に成り立ちます。

技術的発展のみならず、対象を「観察して描く」という手続きと、対話から得た精神的な学びが、発見や新しい見方、考え方を生み、最後には自分へ還るのです。

そして、芸術作品によって、「観察、対話、発見、再認識(認め合い)」が他者観として多くの人に循環していくことを望みます。

 

私の制作スタイルとして

基本的に、写真模写はしません。実際にその場で観て感じた物事を描くことにこだわりをもっています。現実を感じ取ることができますし、自身の未熟さも直接感じることができます。自分の内側で起こっていること、外側で起きていることを眼と手と意識で感じながら制作をするところに醍醐味があるのです。

その生身の素の自分から湧き出た結果を誤魔化さず描き写すようにこころがけています。そこに意味があると信じています。

目の前の現実を観察し、描いていると、全てが刻々と変化しているのを感じます。時間と共に、気温、湿気、日差し、影、音などその空間や空気に微細な変化があり、同時にその影響下で自分の意識や体にも変化が起こります。

現実の微細な変化や、ゆっくりと動いている物事を観察しながら描き留めているのです。

対象をどんなにじっと一生懸命観察しても、追い越せない、ただただ追いかけるのみなのです。対象物を観察している時間、一緒に過ごす時間が長ければ長いほど、その対象に真に近づけるのだと思います。しかし、これは、とても地道で質素な行為です。

 

菅野登志也

神奈川県出身

多摩美術大学卒業

店舗内装デザイン業を経て絵画教室Atelier Kannoを主催

14th国際Art Renewal Center competition Finalist